シフトレス薄膜とは
薄膜は、その表面の構造上、水分などを吸って膜をつくったあとに徐々に光学特性などが悪くなっていくことがあります。これを光学特性が特定の方向へシフトするという言い方をします。シフトレスとはこうした経時変化の起きない、まさに理想的な薄膜のあり方であり、この薄膜を実現することが品質上の一つの目標となります。
薄膜が用いられる光学部品の多くは機器の内部に鎮座しており、ユーザーが直接触れたり、見たりすることが出来ないものも多いです。しかし、これらの小さなパーツが光学製品の生命線とも言えるもので、設計どおりの光学特性が発揮されなくなってくると、製品としても寿命を迎えることになります。中にはパーツの交換が困難であったり、ユーザー側でも一体どうして精度が悪くなったのか分からないケースもあるため、より長く、同じ特性を維持し続けることが重要です。パーツによっては定期的な交換を前提となっているものもありますが、一定期間、所与の特性を維持しなくてはならない点は変わりません。
このため、光学特性などが「シフトレス」である薄膜をつくるために、真空成膜装置メーカーなどでは技術開発・技術革新が行われ、蒸着材料メーカーなどでは、より光学特性がシフトしにくい薄膜を実現するための材料構造の改良などが行われています。
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
スポンサーリンク