蒸着材料のスプラッシュとは
蒸着材料に起因する問題として、スプラッシュとアウトガスが二大トラブルといっても過言ではありません。スプラッシュは突沸(とっぷつ)とも言われ、英語ではspittingなどとも言われますが、電子ビームなどを材料に照射した際に、周囲に材料が飛散する現象のことを総称してスプラッシュといいます。材料はハースや坩堝内で溶かし込みながら使うか、ペレットやタブレット型のものを直接使うかとの二択ですが、照射時に材料からこうした微細な破片がスプラッシュによって飛散すると、基板にブツやボツと呼ばれる欠陥を引き起こします。これらはピンホールの原因ともなり、代表的な膜欠陥の一つです。
スプラッシュは多かれ少なかれ、成膜工程中には起こっていますが、問題となるのは基板に到達してしまうほど激しく飛び散るスプラッシュです。特に材料のもつ物性によってもこれには差があります。例えば低屈折材料として代表的な材料であるMgF2(フッ化マグネシウム)は、スプラッシュの激しく起きる材料の代表格ですが、成膜レートを落としたり、材料の溶かし込みを十分にする、ビームの当て方を変える、材料を変えるなどの様々な工夫により低減可能となっています。
要はスプラッシュは基板に到達させないことが重要となりますので、実用上、許容できるレベルにまで落とすことが目標となります。
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
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