研磨の原理について
物を磨くことで表面を鏡面のように滑らかに仕上げることもできますが、なぜ磨くことで表面の凹凸が限りなく平坦になるのかはいくつかの説があります。
微小切削説
この説によれば、研磨材のもつ物体を削り取る力によって表面を少しずつ切削することで凹凸を平坦化されているとされます。粗工程の研磨では主としてこの作用によってものが磨かれていきます。
矛盾点
微小切削説は、研磨中に発生する熱や圧力が大きく影響することを考慮していない場合があります。また、非常に硬い材料を研磨する際に、この理論だけでは説明しきれない現象(例えば、摩耗粉の生成や表面変化)が見られることがあります。
塑性流動説
どのようなものであっても表面を拡大すると山や谷がある凸凹の状態が観察できますが、この説では研磨中に研磨材と加工している対象が摩擦によって高温となって、山の部分が流動して傷として見える谷を埋めてしまう現象が起き、表面が平滑になっているとされます。バフ研磨といって、研削作用というよりは、加工時に発生する熱で塑性流動に近いタイプの研磨でこの現象が起きていると言われます。
矛盾点
この説は、高温による塑性変形が必ずしも全ての素材で発生するわけではなく、温度依存性や材料特性によって異なるため、すべての研磨条件で適用できるわけではありません。また、摩擦熱が過剰になると材料が損傷する可能性もあるため、理論的な限界があります。
化学作用説
この説では研磨材と研削液、磨いている対象との間に何らかの化学反応が起こって水和層ができます。それを削り取ることで表面が平坦化していくという説です。化学研磨といって、表面を薬品によって溶解させていく研磨方法もありますが、これは物理的な作用とは関係なしに化学反応のみで行う研磨の種類の一つです。
研磨の様式によっては、これらのどれかの特徴が顕著に見て取れるものもありますが、多くの研磨作業では多かれ少なかれこれらの作用が複合的に起きることで、ものの表面が磨かれていると考えられます。実際のところ、現在の科学ではなぜものが研磨できるのか、研磨されている表面で何が起きているのかは完全に解明されておらず、断片的に観察できる上記のような現象や、経験上から導き出される推測によって説明がなされています。
矛盾点
化学作用説は物理的な作用とは異なるため、すべての研磨プロセスに適用できるわけではありません。特に物理的な摩擦や切削効果が重要な場合には、この理論だけでは説明できない現象があります。また、化学反応の速度や条件によって結果が大きく変わるため、一貫した結果を得ることが難しい場合があります。
複合的作用説
実際の研磨作業では、上記のいずれか一つの作用だけでなく、これらの作用が複合的に働くことが多いと考えられています。例えば、微小切削と塑性流動が同時に起こったり、化学作用と物理的な摩擦が相互に影響し合ったりすることで、より効果的な研磨結果が得られることがあります。したがって現在のところ、研磨プロセスは多くの場合これらの作用が複合的に働くというのが通説です。特定の条件下では微小切削作用が優位になることもあれば、高温による塑性流動や化学反応も重要な役割を果たすことがあります。そのため、「どれか一つの理論だけで全てを説明できる」という状況には至っていません。実際の研磨作業では、多様な要因が相互に影響し合うため、それぞれの理論を組み合わせて理解することが求められています。
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