研削における残留応力の違い

2024年12月27日更新

加工対象に、何か力が加わるとそこには「応力」が発生し、目に見えないものも含めて、「ひずみ」が発生します。力を加えるのをやめれば、その応力もひずみもなくなりますが、こうした力が、いつまでも加工対象の中に残ってしまう現象を「残留応力」と呼びます。

何が問題かといえば、加工中にはワークに大きな力がかかりますので、この力が加工した後も物体の中に残ってしまうと、材料の強度に直接影響が出てしまうという点です。応力やひずみのない状態の物体ならば耐えることのできる負荷がかかっても、何らかの残留応力が物体の中に残っていると、それが加算されてしまうことになり、本来の予測よりも少ない力で物が壊れてしまうことになります。

残留応力が発生するのは研磨に限ったことではありませんが、どのような力が、どちらの方向に残ってしまうのかは設計時にも念頭においておく必要がある事柄です。

例えば、平面研削を行った場合、アルミナを砥粒に用いた一般砥石で加工を続けた場合、研磨している表面付近には「引張り」方向に残留応力が出てきます。これが超砥粒であるダイヤモンドやcBNを砥粒とした砥石を使った場合は、「圧縮残留応力」となります。一般的に、物体は圧縮強度のほうが引張強度より強くなるため、引張強さがその物体の強度の指標のひとつとなりますが、こうした点を鑑みると、疲労寿命についてはダイヤモンドなどの超砥粒で加工したほうが長くなるということになります。

表面からある程度の深さまで入ると、残留応力はどちらの砥石でも関係なくなり、そもそも影響もゼロとなりますが、表面付近についは、こうした残留応力の面でも砥石の違いが影響してきます。部品表面における応力が関係する製品や部材であれば、加工時におけるこうした違いも一考の価値があるでしょう。

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