サファイア基板研磨について

2024年12月27日更新

サファイア基板は特にLED用の基板として使われ、サファイア結晶そのものを研削・研磨することから、ウエハ状になったものをポリッシングする工程まで各所で「研磨」を見ることが出来ます。

サファイアは酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)を主成分としており、その硬度は鉱石の中ではトップクラスのもので、サファイアと成分を同じくするアルミナ自体が研磨材に使われていることからもその硬さが伺えます。なおダイヤモンドと比べると、モース硬度では一段階しか違いませんが、実際の硬度にはかなりの開きがあり、やはりダイヤの硬さにはどの鉱石も及びません。

サファイアは結晶として引き上げたあと、LED用として切断・研磨して用いられるほか、時計の窓ガラスや装置の窓部分などにもサファイアガラスとして使われます。耐熱温度がきわめて高い、硬度が高いことから工業用にも特定用途でよく使われます。ただし温度の差、つまり熱衝撃には弱い材料として知られるため、留意が必要です。耐熱温度が2000℃近くと他のガラス材料に比べて群を抜いて高いですが、熱した状態から急冷してしまうと破壊等につながる可能性があります。

結晶の加工ではダイヤモンド砥石が使われますが、ラッピングなどの必要となるサファイア基板の研磨にはコロイダルシリカ系のCMPスラリーが用いられます。

工程ごとに異なる工具を使うため、使い分けがされています。例えばサファイア結晶をマルチスライスして板状に加工するような場合、電着ワイヤー(ダイヤモンド砥粒)といった電着工具も使われます。

結晶の外周部を削り込むような場合はダイヤモンドホイールが適しています。ダイヤモンド砥石やダイヤモンドホイールでの研削、研磨を行う場合、ボンドの選択が重要となりますが、サファイア結晶の場合、メタル、レジン、ビトリファイドいずれも使用されています。またウエハの面取り用にも使われます。

材料の分類としてはセラミックスに近く、硬くて脆い、いわゆる硬脆材料になりますので、小さな欠けやチッピング等にも留意する必要があります。効率的になめらかな表面を得るのは難しい材料とされ、難削材のひとつに分類されます。というのも、この材料は破壊靭性値が小さく、結晶粒界も持たないことが知られており、簡単に言えば、砥粒の力がかかる方向によってはあっけなくその部分が削れることがあります。つまり砥粒の刃で表面にとっかかりができると、そこから材料表面は比較的容易に削れることが分かっています。

このことから、研削はダイヤモンドホイールに任せ、表面粗さをさらに鏡面状態に仕上げていくような仕上げ研磨はスラリーで行っていくことが能率的な作業工程となります。

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