鋳物に適した砥石は何ですか

2024年12月27日更新

鋳物の研削加工において、適切な砥石の選択は加工効率と仕上がり品質を左右する重要な要素です。選択には、鋳物の材質特性、要求される仕上がり精度、作業効率、経済性などを総合的に考慮する必要があります。鋳物の種類に応じた最適な砥石の選び方は、主に鋳物の材質や硬度に基づくことが多いです。以下に、一般的な鋳物の種類とそれに適した砥石の選び方を詳述します。

鋳物に限らず、砥石選択の際の一般原則は以下になります。

  • 被削材が硬いほど、細かい砥粒と高い結合度を選択
  • 仕上げ要求が厳しいほど、細かい粒度を使用
  • 大量除去が必要な場合は、粗い粒度を選択
  • 加工面積が大きい場合は、やや柔らかめの結合度を選択

鋳物の種類

一口に鋳物といってもその材質はいくつもあり、それぞれに選択すべき砥石は異なります。以下にワークとなる材料ごとに見ていきます。

鋳鉄

鋳鉄は一般的に硬度が高く、耐摩耗性に優れています。このため、研削には硬めの砥石が推奨されます。具体的には、セラミック砥石やダイヤモンド砥石が適しています。これらの砥石は、鋳鉄の硬い表面を効率的に削ることができ、仕上がりも良好です。

アルミニウム鋳物

アルミニウム鋳物は比較的柔らかい材質であるため、柔らかめの砥石を使用することが望ましいです。具体的には、軟らかい砥石やゴム砥石が適しています。これにより、アルミニウムの表面を傷めることなく、スムーズに研削が行えます。

鋳鋼

鋳鋼は鋳鉄よりもさらに硬い材質であるため、硬度の高い砥石が必要です。特に、セラミック砥石や金属砥石が効果的です。これらの砥石は、鋳鋼の硬い表面をしっかりと削ることができ、耐久性も高いです。

選択の具体例

グレー鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)

砥石種類
WA系(白色アルミナ)砥石
粒度
荒研削:#36-80、中研削:#80-150、仕上げ:#150-180
結合度
I-K(中程度)
選択理由
片状黒鉛による自己潤滑性があり、比較的柔らかい砥石で効率的な切削が可能

ダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)

砥石種類
A系(茶色アルミナ)またはC系(黒色炭化珪素)
粒度
荒研削:#36-60、中研削:#80-120、仕上げ:#150-220
結合度
K-M(やや硬め)
選択理由
高強度・高靭性に対応する必要があり、より強い研削力が必要

白鋳鉄

砥石種類
ダイヤモンド砥石またはCBN砥石
粒度
荒研削:#40-80、仕上げ:#100-200
結合度
L-N(硬め)
選択理由
極めて高い硬度に対応するため、超硬質砥粒が必要

可鍛鋳鉄

砥石種類
WA系またはA系アルミナ砥石
粒度
荒研削:#36-80、中研削:#80-150、仕上げ:#180-400
結合度
J-L(中〜やや硬め)
選択理由
中程度の硬度に対応し、バランスの取れた切削性能が必要

軽合金鋳物

砥石種類
C系(緑色炭化珪素)
粒度
荒研削:#46-80、仕上げ:#100-220
結合度
G-I(柔らかめ)
選択理由
目詰まり防止と熱変形抑制が重要

鋳物の厚みや形状

鋳物の厚みや形状によっても砥石の選び方は変わります。厚みがある場合は、より強力な研削力を持つ砥石を選ぶ必要があります。また、形状が複雑な場合は、柔軟性のある砥石を選ぶことで、より精密な研削が可能になります。

鋳物の種類に応じた砥石の選び方は、材質の硬度や特性に基づいています。適切な砥石を選ぶことで、研削効率が向上し、仕上がりの品質も向上します。特に、鋳鉄や鋳鋼には硬めの砥石、アルミニウム鋳物には柔らかめの砥石を選ぶことが重要です。

鋳物の種類に応じた砥石の選び方には、さらに以下のポイントが考慮されるべきです。

鋳物の種類によっては、特定の砥石の粒度や形状も重要です。例えば、鋳鉄や鋳鋼のような硬い材質には、粗目の砥石(240番や400番)を使用して初期の研削を行い、その後中目(1000番)や細目(6000番)で仕上げることが推奨されます。これにより、効率的に削りながら、最終的な仕上がりを滑らかに保つことができます。

また、アルミニウム鋳物の場合、柔らかい砥石を使用する際には、特に目詰まりを防ぐために、砥石の水分管理が重要です。水を適度に補給しながら研削を行うことで、アルミニウムの表面を傷めずにスムーズな研削が可能になります。

天然砥石やセラミック砥石を選択肢として考慮することもできます。天然砥石は、鋳物の特性に応じた微細な仕上がりを提供し、特に高級な鋳物に対してはその効果が顕著です。セラミック砥石は、安定した研削力を発揮するため、頻繁に使用される場面での選択肢として有効です。

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