本の研磨方法について

2024年12月27日更新

古本の量販店等で多用されるようになった書籍研磨機は、本の側面部を研磨によって削ぎ落とす事で、黄ばんだり、しみになったりしている汚れを除去する、という原理のものです。

一言で言えば、微量ではありますが、紙の表面を削り落として見てくれをよくするという方法です。

他の工業分野ではこうした側面の部分をコバと呼ぶこともありますが、本の世界では「小口」と呼ばれているため、こうした本の側面部の研磨は小口研磨と呼ばれます。

書籍用の研磨機というのは、いわゆる研磨業界ではベルト研磨機と呼ばれているものです。砥粒の付着しているエンドレスベルトにテンションがかけられており、それが高速で回転し、ベルトの表面に本の小口があたることで、研磨されていきます。

これらに使われる研磨ベルトは、研磨紙、研磨布を製造するメーカーで扱われていることが多い品目となります。研磨ベルトは、基材(ベルトそのもの)、接着剤、砥粒の三つを主要構成要素とします。当然消耗品であるため、定期的に交換は必要ですが、本の紙というのはワークの中でやわらかい部類になるため、損耗は他の工業材料に比べれば軽微といえます。また、紙を研磨するための砥粒にはダイヤモンド等の高価な超砥粒は必要ありませんので、基本的には廉価なアルミナや状況によっては炭化ケイ素が用いられます。

ベルト面は一定の長さで、研磨対象となるワークと接する部分を水平に保つことができます。本の小口研磨では、その性質上、研磨面が長く水平であるため、他の円形をしている研磨工具には向かない研磨作業となります。

本をしっかりと固定し、直角方向にベルトへ当てる必要があるため、万力のような本を「押さえる」機構を備えた研磨機が一般的で、さらに紙の研磨になるわけですから、微細な紙が粉塵として出ることになります。したがって、書籍研磨機自体に、集塵を行う装置が取り付けられているものが多く、実際問題、集塵なしではきわめて劣悪な作業環境となり、店舗や密閉された室内での作業は困難です。

古本の代表的な量販店であるブックオフでは、店舗内でこの小口研磨を行う機械を見ることもできます。業務用のベルト研磨機を書籍用に調整されたものですが、粉塵が室内に舞うことなく、きれいに本の小口が研磨されていることが分かると思います。

また、最近では新刊の本についても、研磨された「あと」である「研磨痕」(けんまこん)が残っていることがあります。工業分野の世界では、複数の工程を経る場合で、鏡面仕上げ等にする場合は最終的に研磨痕が残っているものはNGとなりますが、途中のプロセスにおける研磨痕はさまざまな情報を読み取る手がかりとなるため、大いに活用されています。

書籍の流通過程で研磨されているものか、新刊の段階で何らかの汚れを落とすために行っているものかは不明ですが、ベルト研磨を行った本の小口というのは、何らかの研磨痕が残ります。

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